お嬢様になりました。
耳の後ろにかかる海堂の吐息。


どうしても意識がそこに集中してしまう。


心臓が破裂しそう。



「俺の婚約者になれ」

「はっ!? 意味わかんない!! 他当たってよ!!」

「さっきも言っただろ。 お前が一番都合がいいんだよ」



あんたにとってはでしょ!?


私の都合は御構い無しなわけ!?



「私は好きな人と結婚したいのッッ!!」

「なら俺を好きになればいいだろ」



このボンボン暴君何言ってんの!?



「バカじゃないの!? あんただって私の事好きでもなんでもないんでしょ!? 好きな人見付けてその人と婚約すればいいじゃんッッ!!」

「お前は何も分かってねぇよ」

「え……?」



感情の読み取れない声に戸惑いを隠せなかった。



「俺たちみたいな奴らは、好きな奴と結婚したいなんて考えねぇよ。 そう叩き込まれて育てられる。 相思相愛でなんつーのは、ごく稀なケース」

「そんなの……可笑しいよ。 好きな人と結婚しないんだったら誰と結婚するの……?」

「利害関係が成立する相手」



そんなの変だよ。


好きだから結婚したいって思うんじゃないの?





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