お嬢様になりました。
父さんは頭に手を当て、呆れたようにため息を零した。



「さっきも言ったんだがな、宝生院さんは海堂君の婚約者だ。 それなのに玲のせいで二人の関係に亀裂が入っては、両家に顔向けできないだろ」

「んー……それはそうかもしれないけど、恋愛なんていつ何が起こるか分からないものでしょう? そうなったらそうなったで、仕方が無いじゃない」

「母さん!! 変な事言わないでくれよ!! 玲に近付く女は誰だろうと僕が排除してやるーっ!!」



俺の事はそっちのけで、言いたい放題言う家族。


父さんがそういう反応をするのは分かっていた。


良い反応は示さないだろうという事は。


たとえ友達関係であっても、誤解を招く程仲良くするのは避けて欲しい……きっとそれが父さんの考えだろう。


両家とも昔から付き合いがある父さんにとって、俺のせいで両家と関係が拗れるのはきっと得策ではない。



「煩い。 特に兄貴」

「れ、玲ー……酷いよ……」



兄貴は態とらしくガックリ肩を落とした。


突っ込む気力もなければ、気分でもない。


俺は立ち上がり、父さんの顔を見た。



「父さん、悪いけど俺は好きにさせてもらうから」





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