お嬢様になりました。
次の日学校に行くと、靴箱のところで先に靴を履き替えていた海堂とバッタリ会った。


海堂は俺の顔を見るなり、眉間にシワを寄せた。


俺もそうだが、海堂も俺とは挨拶すらしようとはしない。


靴を履き替えた海堂が俺に背を向けた。



「海堂」



SSクラスの靴箱は他のクラスの靴箱と少し離れている為、今は海堂と俺しかいない靴箱は少しだけ静かで、妙に声が大きく響いた。


振り向いた海堂は更に深く眉間にシワを寄せた。



「俺は葵が好き」

「あ? お前、何言ってんのか分かってんのか?」



体ごと後ろを向いた海堂は、今にも殴りかかってきそうな雰囲気だ。



「海堂の婚約者だろうと関係ない。 俺は葵が欲しい」

「黙れよ」

「最後にどうするか決めるのは葵自身だ。 いつ迄も葵をたかだか婚約なんていう名目で、繋いでおけると思なよ」

「黙れって言ってんだろうがッッ!!」



海堂に胸元を掴まれ、後ろの靴箱の棚に背中をぶつけた。



「離せよ、制服がシワになる」

「葵に指一本でも触れてみろ……許さねぇからなッッ」



海堂の言葉に、我慢していた怒りが込み上げ、気付けば俺も海堂の胸元を掴み上げていた。



「そんな事をお前に言われる筋合いはない。 お前こそ今度また葵を傷付けたら、絶対に許さない」



力尽くで海堂の体を引き離し、俺は制服を整えた。


海堂は舌打ちをすると、再び俺に背を向け歩き始めた。





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