お嬢様になりました。
私の心の中を読み取る様に、佐和さんが和寿さんの頭を叩いた。


思わず心の中でガッツポーズ。



「そういえば、宝生院さんは海堂君と婚約を結んだそうだね」

「は、はい」



理事長にそんな事を言われるとは思っていなくて、ちょっと驚いた。


玲のお父さんが理事長なら、佐和さんが婚約の事を知っていたのも頷ける。



「転校初日に海堂君と一悶着あったと聞いていたから、婚約の話を聞いた時は驚いたよ」

「あはは……」



相模先生ってば、わざわざ理事長に報告する事ないじゃん。


一悶着って程の事でもなかったんだしさ。



「でも、二人は凄くお似合いだと思うよ」

「……ありがとうございます」



そんな言葉しか浮かばなかった。


私の事も隆輝の事もよく知らないくせに、よくお似合いだなんて言えるよね。


膝に置いていた携帯が震え画面を見ると、着信が入っていた。


……隆輝?



「ちょっとすみません」



私は携帯を持って、急いでリビングを出た。


リビングのドアを閉めると同時に、応答ボタンを押し携帯を耳に当てた。



「もしもし」

「何してんだよ?」

「何って……ご飯、食べてた……」



嘘は言ってない。


でもどうしてだろう……。


やましい事をしている訳じゃないのに、玲と一緒にいる事は言えなかった。





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