お嬢様になりました。
ふざけんな。


勝手に話を進めてんじゃねぇよ。


両親のくだらねぇ欲を満たさせる為に、葵に会わせたくない。


あいつは俺たちとは違う。


いつだって自分に素直で、無理して笑ったり、上辺だけの優しさで接したりしない。



「近い内に宝生院会長に連絡しておこう」

「宝生院会長交えての食事は、もう少し保留にしてくれ」

「何を言うんだ。 こういう事は一刻も早い方がいいだろう」



苛々する。


昔からそうだ。


俺の気持ちなんて関係ねぇ。


そのくせ俺の為だと言わんばかりの顔をしやがる。


親らしい事なんて何一つした事ねぇくせに。


俺は母親の手料理すら、食べた事ねぇよ。



「俺たちのペースってもんがあんだよ。 食事をするならまず葵と話をする」



葵に話す気なんてさらさらない。


まだ食事は途中だったが、俺は席を立った。


こんなクソ不味い夕食は久しぶりだ。


一流シェフの作ったご飯よりも、あの日葵と食べたハンバーガーのほうが美味しく感じる。


あいつと一緒に食べれば、何だって美味い料理に変わるんだろうな。





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