お嬢様になりました。
*****



「おはようっ、隆輝さんっ!!」



教室に入ると、すかさず橘が声をかけてきた。


飽きもせずよくもまぁ声をかけてくるなと感心する。


さっさとフランスに帰ればいいのに。


最初はウザくて堪らなかったが、こいつも俺と同じなんだと思った時から、あまり冷たくするのは酷なのかもしれないと思うようになった。



「今日の放課後、もし宜しければ買い物に行かない?」

「生憎放課後は予定が入ってる」

「ここ最近は放課後はいつも宝生院さんと一緒ね。 いったいお二人で何をしているの?」

「……別に、たいした事はしてねぇよ」



橘に話したくなかった。


橘だけじゃない。


他の奴にも話したくない。


葵の奴も誰にも話していないだろう。


『自分がモデルなんて、恥ずかしくて人には言えない!!』とか何とかぬかしてたからな。


本気でそんな事言ってんのか?と内心呆れてしまった。


あいつは自分の事を何も分かっちゃいない。



「おっはよー」



大きな欠伸をしながら隣の席に座る葵。


手で隠すなり、ハンカチで隠すなりしろよな。


神園はそんな葵の様子をクスクス笑ながら見ている。


葵と神園は正反対な性格をしているのに、不思議と二人は仲が良い。





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