お嬢様になりました。
テレビを点けると、大きな画面に大きく隆輝が映った。


思わずリモコンを持つ手に力が入る。



「これって海堂君だよね!?」

「うん……」



何処かのパーティー会場で取材を受ける隆輝のお父さん。


その隣には綺麗にスーツを着こなし、キリッとした表情をした隆輝の姿。


普段学校で見る隆輝とは違い、凛々しく男らしい顔から目を離せなかった。



「海堂君とはどうなってるの? 上手くいってるの?」

「…………」

「葵?」

「っ……え?」



華に肩を叩かれハッとなった。



「ごめん……聞いてなかった」

「どうしたの? 海堂君と喧嘩でもしてるの?」



喧嘩か……。


喧嘩なんてしょっちゅうしてたな。


いや、あれは喧嘩じゃなくて、どっちかが一方的に怒ってるだけだったかも。


今となっては懐かしい出来事。



「隆輝と婚約解消した」

「え!? どうして!? やっぱり喧嘩したの!?」



目を見開いて驚く華に、笑って首を横に振った。


喧嘩別れの方が良かった。


別れ……そういう言葉で表すのは変だよね。


別に付き合ってたわけでもなければ、本当の婚約者でもなかったんだから。





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