お嬢様になりました。
隆輝の背中におでこをくっつけ、口を開いた。



「隆輝、ありがとう」

「俺は別に何も……お前が無事で良かった」



腕に温かいものが触れ、それが隆輝の手だと直ぐに分かった。


触れてくれる事が嬉しくて、つい口元が緩んでしまう。



「聞いて欲しい事があるんだけど、このまま聞いてくれる?」

「何だよ」

「隆輝はもう私の事なんてどうでもいいかもしれない……ううん、きっとそうだと思う」

「は? お前……」

「最後まで聞いて!!」



腰を捻り、後ろを向こうとする隆輝の体にギューッとしがみついた。


気持ちを伝えたら、もう今まで通りの関係にはなれないかもしれない。


絶対なれない。


だってあんなに綺麗な彼女がいるんだもん。


でも、私は自分の気持ちを伝える為にここまで来た。


だから最初から砕けるって分かってても、ちゃんと自分の想いを隆輝に届けたい。



「隆輝にどう思われてても構わない。 彼女がいても構わない。 でも、私の気持ちを知っててほしいの……りゅっ、き……大好き……っ」



泣いても仕方が無いのに、告白と共にドッと涙が溢れた。


隆輝を困らせるだけだと分かりながら、自分では涙を止める事が出来なかった。





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