お嬢様になりました。
突然視界が歪み、背中に柔らかな感触がした。


覆いかぶさる様に隆輝が私の上に跨って乗っている。


ソファーの上に押し倒されてる?


急な展開に頭がついていかず、あれだけ流れていた涙も気付けば止まっていた。



「もう一回言え」

「……え?」

「さっきのもう一回言えって言ってんだよ」



さっきのって……もう一回告白しろってこと?


さっきは顔が見えなかったから良かったけど、今はバッチリと隆輝の顔が見えている。


段々と顔が熱くなってきた。


隆輝の顔がグッと近付き、後数ミリで唇が触れてしまいそうな距離に心臓が煩く暴れ始めた。



「言えよ……」



色気を纏った声が頭に響き、全身の力が抜けていくようだった。



「隆輝……大好きだよ……」

「俺はその数百倍、愛してる」



隆輝は言い終えるなり、私の唇を塞いだ。


触れるだけのキスを何度も繰り返し、絡みのある濃厚なキスに変わるのにそう時間は掛からなかった。


私に喜ぶ暇も恥ずかしがる暇も与えてくれない。


でも、今、この時流した涙は今まで生きてきた中で、一番幸せな涙だった。


おばあちゃん、私も見つけたよ。


たった一人の愛しい人を……。






fin.

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