しいと星屑



「あの…」

聞こえてないみたい

「あの…!」


彼は気付いたみたいで、
ゆっくりと顔をずらした

空から私へ…


心臓が爆発しそう!


「あ…あの、名前…何て言うの?」


言えた。

ずっと言えなかったことを、言えた


彼は少しの間、静止したまんまだった


それと共に、鼓動は高まる一方で


ドキドキ…ドキドキ…


やっと彼の口が開いた


「さく」


「…え?」

「新見 朔」


すると彼は、再び空の方へと向き直した


にいみ…さく…

なんか、凄く彼に合う名前だな

雰囲気っていいますか、
響きって言いますか


そして、彼の声はとても綺麗だ

透き通った、トゲの無い感じ

ずっと聴いていたいような声


呼び方は…
新見君かな?朔君かな?


考え込んでいると、彼は私の方を見た

さっきよりも、速いスピードで。


「君は?」

「え?」

「君の名前」


「えっと、私は、しい…」
「あれ?歯磨き終わったの?」


名前を言いかけたところで、
雪乃ちゃんが廊下に顔を出した


すると彼女は、
私が彼と話しているのを察したみたいで


「あっごめんお話中邪魔しちゃって…
次、移動教室だから急ごう?」


そうだ、次は科学だから移動教室だ

準備しなくちゃいけない


「ごめん雪乃ちゃん、今行くっ…」

私は振り返って、
彼に名前を言おうとしたんだけど

彼はもう隣の教室に入って行く所で、

私は名前を最後まで言えなかった





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