殺し屋天使


今でもどこかに安置されているという聖母マリアの亡骸。


何年、何百年経とうと、その亡骸は生前の姿のまま朽ちる事がないという。


その亡骸の傍に群生する白百合。


ある信者がその白百合を持ち帰り移植すると、その傍らから泉が沸き、その泉の水は万病を癒したとされる。



どんな病をも直すマリアの化身・マリアリリィー。


……んなモン、この世にあって堪るか、ドアホ。



クスリ、と男が笑った。



「何故?君は目の前でリリィーの奇跡を見てもまだ信じない。」



その言葉に導かれるように少年の視線は診察台の患者に落ちた。



『どんな病をも治す』マリアリリィー。



「…んな、アホな……」



しかし少年は見たのだ。

至が男の子を生かした奇跡を。





「―――尤も」



縛った糸をプツリと切りながら、男は続けた。





「コイツの力は全能ではない。コイツの施す奇跡には多大な代償が必要となる。」


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