殺し屋天使
至の身体の損傷。
至の能力は相手の損傷を治すモノではない。
相手の損傷を自らの体に移す。
「てこたぁ、相手が瀕死の重傷やった場合、万が一にはコイツも―――」
思い付きを口にして少年は 否 と自分の考えを打ち消した。
「…そう。その通り。」
ぞっとするほど低く冷たい声に少年が視線を上げる。
至に落ちたままの男の双眸に浮かぶのは殺意。
「致死10レベルの怪我をコイツがそっくり自分に移したとして、コイツの身体に残るのは致死5レベル。―――後の半分はコイツの双子が受ける。“彼女”の意志に関わらず。」
だから至を殺せない。
どれほど忌々しくとも、至だけは殺せないのだ。
至が絶命するような事があれば、リンクする双子の姉もまた潰えてしまう。
パチンとハサミが鳴って、最後の縫合を終えた。