殺し屋天使
コイツは一体何者なんや……。
魔窟の魔女と互角―――もしくは凌ぐ腕を持った男。
いや、凄いのは術ばかりではなく―――
「あれは、なんなんや。」
現在彼女は筒状の水槽の中でたゆたっている。
たゆたうとは語弊がある。
酸素ボンベを付けた彼女はゲル状のモノの中。
さしずめフルーツゼリーだ。
「あれは表皮膚の培養だね。」
「皮膚の……培養?」
皮膚と苔のDNAを融合させた新しいタイプの義皮膚。
一枚の皮膚で膜のように身体を覆うモノではなく、『殻』の表面にそれを蔓延らせ、『殻』から養分を吸い取り繁殖し続ける―――苔。
ゲル状のモノは、栄養剤もしくは肥料、である。
「全て人間と同じパーツで組み上げたいトコロだがそうもいかないからね。苔の下に薄く殻を纏わせている。殻と、骨はボーンチャイナ……尤も改良を加えてモース硬度4~5のトコロを15にまで高めてある。」
ボーンチャイナ。
かつてイギリスで多用された中国磁器。
滑らかな乳白色が特徴的で、その色を出すためのリン酸カルシウムの含有率30%以上とされている。
それを多く含む牛の骨灰を使用していたことからボーンの名が付けられている。