殺し屋天使

そこまで来て、少年の脳裏にある確信めいたものが一つだけ浮かんだ。




「聞いてええか。」


「なんなりと。」


「アンタ……メフィストちゃうか?」


「ああ…久しぶりに聞いたね、その呼び名。」




クスリと男は笑声を洩らした。






「いかにも私がかつてメフィストと呼ばれていた者だ。」






メフィスト。


それは魔窟の魔女に並ぶ異名。


医者であり科学者。


その腕前は神業。



なれど―――




「教えてくれ。アンタにとって医療とはなんや。」


「医療―――ねぇ。逆に問おうじゃないか。君にとっての医療とは?」




言われて少年は詰まった。








「…分からへん。」


< 106 / 116 >

この作品をシェア

pagetop