殺し屋天使



自信なげに応えて、少年はぽつぽつと胸の裡を明かした。




どうせ人は死ぬ

死ぬと分かっていて生かそうと躍起になるのは愚かだ。



かつて思ったニンゲンと死神のチェスゲームを持ちだして説明すれば、男は少し愉快そうに「ふむ」と頷いた。



「オモシロイ発想だ。真理だね。…だが、そのチェスゲームのたとえで言うなら。」




言いながら使い捨て手袋を外した。






「君はチェス盤が古くなって壊れたらどーするね?」


「どうって…捨てんやないけ?」




その後買い替えるかどうかは別として。


まぁそうだろうね、と言って男は手袋を躊躇いもなくゴミ箱へ落とした。




「チェス盤もニンゲンも同じ事。使い物にならなければ捨てるのみ。」


「………っ。」


「患者は単なるゲームの道具だ。プレーヤーはあくまで死神と私。ゲームは手術の一回一回。」




――――そして私はかなり勝ち越してる。

男は愉快そうにそう嘯いた。










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