殺し屋天使



テレビを見続ける彼の横で彼女は携帯を取り出し電話をかけ始めた。



「あ。もっすもっすーアタシアタシ~。えー?そーそー。」



…アタシアタシ詐欺……


そこを突っ込む代わりに「ちょっとウルサイんだけども…」と控えめに非難してみたが、当然の如くに聞き流された。


大体、テレビを観ている人の隣で携帯はマナー違反だと思います。


不満に一票…とばかりにもういっちょ音量を上げる。


テレビから溢れる下らないコント。


それに負けじと張り上げた彼女の声が部屋を埋め尽くす。




「契約失敗っすわ~。え~今回は成功報酬ってことでまだ金貰ってねーじゃねーっすかぁ~。それでチャラってことでぇー。契約無かったってことでぇ~。」



JKの会話か。



「…ねぇ、相手は一応上司で目上なわけだからさ、ちょっとその言葉使いはどーかと…」


「はぁ?敗因っすかぁー?殺る前に心臓打ち抜かれちまったんすよ~。え~?ぴんぴんしてるじゃないかってー?んなことねぇっすよー。ドッキンむねむねで足腰諤々、色んなモン垂れ流し―――」




聞き流されたし。


大体、胸打ち抜かれてドキドキはナイ。


というかデキナイ。


ちなみに言いまわしが微妙にエロイのはいかがなものか。

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