先生、スキ
「おいっ!」
そして先生は私の手首をつかんだ。
「痛いです、離して。
警察呼びますよ?ほんとに」
彼はしぶしぶ手を離そうとした。
そして一緒に降りてきたのだ。
誰もいない駅のホーム。
いるのは先生と、私。
もう、どうでもいいや。
一人いても寂しいし。
「あの先生、なんであのオヤジの手を離したんですか?」
なんとなくそう話しかけた。
「そらそうだろ?
女の子が痴漢に襲われてるとこなんか見たら
助けるもんだよ」
「ふうん。
でも他の人は助けてくれなかったよ
無視してたけど?」
私は少し口角をあげて笑う。
「弱いんだよ、皆。
俺みたいに馬鹿じゃない。
俺は馬鹿だから斎藤を助けたんだ。
皆、怖いんだよ。
だからなんにも出来ない。
けど俺はこんくらいしか出来ない。」
先生も歯を見せて笑った。
屈託のない、綺麗な笑み。
「じゃあ先生が馬鹿じゃなかったら
私は犯されてたわけだ。」