ビターチョコレートに口づけを

「あり得ない……
何あの人。そんなに私にぶっ殺されたいのかなぁ?
バカ、アホ、死ね、鬼畜!!!!!!!!!
大体私が何した!!!!!」


そう言って、奴が消えていったリビングに叫ぶが、当然、返事は帰ってこない。

ムカつくので、兄の昨日履いてた靴を近くにあった袋に入れて、そのまま通学鞄へとしまってやった。

兄はここに泊まりに来るとき、この靴しか持ってこなかったため、これで今日、奴が家を出ることは不可能だ。ざまぁみろ。

それを無言で見ていたいっくんは、子供のいたずらをみつめるように困ったように笑って。


「ごめんね?
さっきの痛かった、よね?
ちょっと、慎司をからかったつもりだったんだけど、相当ご立腹みたい。
俺にすればいいのに、ゆうに八つ当たりされちゃったね。」


そう言って、私の頬に手を添えたいっくんは、先程の笑みを止めて、真剣な表情を見せると、優しげな目を細めて、じっと私を見つめた。

ドクンと、心臓が一度、大きく鼓動した。


ななな、何これ!!!


はわわわわと顔を真っ赤にして焦り出す私に構わず、いっくんは、おでこから順に、私の顔をひとつひとつ、確認していく。

赤くなった顔と、うるさくなった心臓。
それらを隠すように下を向こうとするが、それを許さないように、掴んでいる手にも力が入った。


「なななな何してんのさ!」

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