ビターチョコレートに口づけを
「慎司がそういうならそれでいいよ。
でもさ、ほんとに大丈夫?
慎司ん家から遠いって程でもないんだろうけど、結構ここまで距離あるよね?」
そう言って心配そうに眉を寄せるいっくんをよそに、兄ちゃんはまた何時ものように気だるそうに首を掻いた。
「あ?週2くらい余裕にきまってんじゃねーか。」
「可愛い妹のためだもんね?」
「ちげーよ、ばーか。死んでこい。」
くすくすと笑いながらいういっくんとは打って変わって不機嫌そうな声を出す兄。
あの(鬼畜な)兄が、からかわれている…!!!
是非ともそのコツを知りたいような一生知りたくないような……
そう悶々としていた時、急に通学用鞄が飛んできた。
え、と声を出す間も、避ける間もなく、それは顔面へと吸い込まれるように、直撃。
「ぶっ!!!!」
なんとも女子らしからぬ呻き声を発して、当然、倒れそうになるが、そこは気力で踏ん張った。
女子に、こんなことをするのはあれだ。
この世で一人しかいない。
「兄ちゃん!!!!!!」
「慎司!!!」
二人でそう叫んでやったが、奴はけらけらと笑って、早く行ってこい、とだけ言って、リビングへと戻っていった。