カレの事情とカノジョの理想
断られた女の人は、取り繕うように笑顔で「じゃあまたね」と言ってからジロリと私を睨み付ける。
そしてヒールの音を鳴らしながら、足早に店内から出て行ってしまった。
「美春チャン? ゴメンねー邪魔入って。でもさー、いい加減名前呼ぼうよー」
さっきの不機嫌な態度がウソみたいな軽い口調に、妙にドキドキする。
もしかして、私の為に怒ってくれたの?
まさか……ね。
「ねー、美春……」
「もうっ! しつこいなぁ。離してよ…………康人っ!」
なんとなくあの女の人とは同じ風に呼びたくなくて、勢いで呼び捨てた。
その間、私たちのやり取りを唖然として眺めていたミカは、私を見ると可笑しそうに笑った。
「ヤスくん、美春よろしくねー? 優しくしてあげてね」
「リョーカイ。それはもう、優しく、かつ激しく? 足腰立たなくなるまでガンバルつもり」
「……何の話をしてるのよ!?」
ようやく蓮……康人は私から離れると、愛嬌のある笑顔で嬉しそうにはしゃいでた。
カノジョって言ってくれたのが嬉しい……そう思うなんて、いったい私、どうしちゃったんだろ?

