恋
「だから」
気づかなくていいことに気づく。
恋はそういうものだ。
だったら、……夏木くんの私への気持ちは恋じゃない。
人に言われて諦められる、そんなものは恋とは違う。
こらえていた涙が一気に溢れ出してきた。
「……だからっ、夏木くんの私への気持ちは、……その程度だったってことだよ」
吐き出した声は尻すぼみになっていった。
自分の言葉に、立ち直れないほどのダメージを受けて、私はもう立っているのがやっとだ。
「山口さ……」
「ごめん。もういい?」
その場から逃げ出したくて、そう言った。
顔中が熱くて苦しい。
誰も居ないところで一人で泣き叫びたい。
風の音も、ガサガサと草を踏むような音も、皆耳障りだ。
でも待って。
私も匡深さんも一歩も動いてないのに、なんでこんな音がするの?
潤んだ視界で見上げると、少し離れたバックネット裏から彼がでてきた。
ううん。一人じゃない。
彼ら――――夏木くんと浩介くんが。