恋
「夏木は諦めることに慣れすぎてる。芽衣子がいてやんなきゃダメだ。あいつに必要なのは物分かりのいい女じゃないよ」
「浩介くん」
「夏木は匡深に飲まれるぞ。あいつは見た目よりずっと弱い。自分を優先出来ないんだ。芽衣子が必要としてやんなきゃダメだ」
「……っ」
浩介くんの言葉に後押しされるように、足が前に出てきた。
もう見えなくなってしまった二人を、追いかける。
私が、なにか言う権利はある?
何を言っても、多分匡深さんを傷つけるだけなのに。
だけど、傷つけてもいい。
私は夏木くんが欲しい。
*
「やめろ、匡深っ」
空気を切り裂くような鋭い夏木くんの声が、耳に届いた。
「嫌だから、あたし。別れるなんて嫌だから」
視界を遮っていた大きな木を超えると、対峙する二人の姿が見えた。
「ねぇ。どうすればいいの。どうすれば夏木はあたしのこと好きになるの。あたしなんでもするから」
「ごめん、匡深。何したってダメなんだよ」
「前みたいに怪我すればいい? そうしたら、夏木あたしのこと心配する?」
匡深さんは足元から小ぶりの枝を拾い上げる。
今は秋、葉っぱとともに枝も幾つか落ちていたようだ。