「ダメだ。やめろ」

「あたしは平気。夏木が傍にいてくれるならどんな姿になったって」

自分の顔をめがけてその鋭い切っ先を向ける匡深さんに、夏木くんは動けずに居た。

私は、……気がついたら飛び出していた。
私に気づいた彼女が怯えたようにこっちを見るから、飛びかかるようにして彼女の腕を掴む。


「やっ、離して」


抵抗を続ける彼女の手が、私の腕の辺りで激しく動いた。そして、その枝は私の腕に傷をつけ、赤い鮮血が腕を伝う。


「芽衣子!」

「近づかないで!」


心配して寄ってきた夏木くんを言葉で制す。

匡深さんは怯えたように、「あ、あ、あ」と叫ぶだけだ。
私は血を止めるために肘の辺りを強く抑えて、心臓より高い位置に上げる。


「夏木くんと別れて」

「いや、いやっ」

「夏木くんをそんな風に追い詰める人に、夏木くんは渡せない」

「や」

「あなたが大事なのはあなたの感情だけだわ」


血の止まらない腕を震わせながら、私は匡深さんを睨みつける。

彼女の気持ちは、痛いほど分かる。
でも、違うでしょう?


「そんな卑怯なやり方で彼を傷つけないで」

「う、えっ」


やがて匡深さんは泣き出して崩れるようにしゃがみ込んだ。
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