恋
「芽衣子、止血しないと」
慌てて夏木くんが私に駆け寄ってくる。
私は、そんな彼の頬にめがけて思い切り平手を打ち付けた。
「同情なんて誰も救わないって、あなたが言ったんでしょ!」
「芽衣子」
夏木くんは呆然としたまま、叩かれた頬をさすっている。
私も頭に血がのぼっているのかも知れない。夏木くんに対してまでこんな風にするなんて。
「あなたはどうしたいのよ! それをちゃんと言わないから何もかもおかしくなる!」
「……芽」
「欲しいものは欲しいって言って。私はっ」
もう我慢したりしない。全部言う。
沈黙の時は過ぎたんだ。
「夏木くんが好きなの。あなたが欲しいの」
言い切ったら、血がすーっと下がっていく感覚がした。
ずっと溜め込んでいた気持ちが爆発したみたい。
だけどなんだかスッキリした。
ぼやけていく視界の中で、夏木くんが泣きそうになってる。
泣かないで、笑ってよ。
あなたはいつも困ってるか怒ってるかばっかりだ。
でも、だから私はあなたが気になったのかな。
そうね多分。
ずっと前から笑わせたくてたまらなかったんだわ。