ドメスティック・エマージェンシー
千鳥足で負け犬さながら帰路につく。
心に比例して足取りが来た時よりも重くなっていて、半ば引きずって歩いた。


足を一歩一歩と前に出す度に視界は滲んだ。
私の足跡を残すかのようにアスファルトには点々と模様が付く。


嫌われた。
もう、完璧に。
もともと好かれてはいなかったが、もはや修正が利かないくらい溝が深まった。


消えたい。
このままどこかへ行けないだろうか。
誰も、私を必要としないのだから。


しかし、いい子の私にはそんなこと出来はしなかった。
行き交う人々の視線を感じて涙すら捨てるように拭い、全速力で走った。
蹴るように、涙の代わりに本当に足跡が残るくらいに、踏み込んで走った。


次第に息が出来なくなってきた。
胸中は慣れない冷たさに身震いする。
家に着いた頃、私の顔は冬なのにぐっしょりと濡れていた。







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