ドメスティック・エマージェンシー
「なおー、そろそろみんなをお昼寝させてちょうだーい」

遠くから声が豪速球で飛んできた。
私の心臓にゴツンと当たり、思わず肩を揺らす。

なお、と呼ばれた目の前の少年は「はーい」と呑気に返事をしている。

まずい、バレる。

自分でも思いがけずなおを引っ張る。

「はっ?何?」

驚いたらしい、口を大きく開け私を見返す。
声にならない言葉を発する。
目を細め、なにか見かねた少年が「ここの近くにある喫茶店で待ってて。すぐ行くから」と至極真面目に言った。

嘘ではないみたいだ。
大きく頷いて来た道を引き返す。

「おねえちゃん、バイバーイ!」

途中、あいりの楽しげな声に見送られながら《零生施設》を後にした。








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