ドメスティック・エマージェンシー
「……親戚よ、遠い親戚。訳あって会わなきゃならないの。だけど、探してもいなくて。そうしたらここのことを聞いて来たって訳」

適当にはぐらかす。
まさかあの男が殺人鬼で、私はそれに誘われた仲だとは言えない。

この少年はまさか彼が殺人鬼になっていようとは思わないだろう。
密かに優越感に浸りながら、一方で可哀想であった。

そうか。
小さく呟き、力無く少年は手を離してくれた。

今度は私が問い詰める。

「ねえ、今のゆうまはどんな人間になっているの」

遠い親戚と言ったのは、しばらく会っていない設定を仄めかしたかったからだ。

「知らないよ、ゆう兄とはもう何ヶ月も会ってないんだから」

ぶっきらぼうに返された。
拗ねているように見え、本当に慕っているのがわかる。

まあ……分からなくもない。
殺人鬼には見えない優しさを持っているのだ。
だからこそ、あの男が何故殺人をするのか知りたかった。






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