ドメスティック・エマージェンシー
「……江里子?」

突如発された言葉がまさか自分の名前だと思わず反応に遅れる。
振り返った先には、ギプスをしていた手で袋を掲げている少し痩せた有馬が立っていた。

「有馬……」

「江里子、どうして……いや、とりあえず入れよ。婆さんいると思うぜ」

以前はニヒル笑いで、鋭い目で私を見ていた有馬が、今は笑い方を覚えたらしい。

見たことのない優しげな笑みを浮かべていた。
ふと、両親に見せたくなる。

あの人たちは今の有馬を見たらどう思うだろう、築き上げたロボットが壊れたとでも思うのだろうか。







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