ドメスティック・エマージェンシー
私の足より車の方が断然早い。
タクシーを呼び、ゼロともわかっていないのにかけてきた番号に何度も掛け直す。

彼は出ない。
無視しているんじゃなく、放っといて欲しい。
そう言われている気分がして何度も何度も掛け直した。

今朝の彼は可笑しかったじゃないか。
何故気づかなかったのだろう、彼のSOSに。

悔しさに唇を噛み締める。
タクシーの安全運転が腹立たしい。

早く、私をゼロのとこへ連れていってくれ。

彼の消えそうな手の代わりに携帯を握り締めた。




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