ドメスティック・エマージェンシー
質問を一通り終えたのか、二人は席を立ち、私にメモ用紙を渡した。

「何か思い出したら連絡ください。ご協力ありがとうございました。……では」

「あ、あのっ」

私からの質問を避けたいのか、あるいは被害者を見たくないのか足早に去ろうとする二人を呼び止める。
渋々二人はこちらに振り返ってくれた。

「あの……刑事さんたちは、ご存知なんですか?……その、ネットと関係してるっていう……」

ああ、と声を出したのは糸部だった。
熊森はつまらなさそうに時計を見ている。
信じていないのは明白だ。

「見ましたか、あの噂」

コクリと頷く。
すると、糸部は嬉々として話し始めた。
熊森だけじゃなく、彼を除いて警察では当てにしていないのかもしれない。

「正直こちら側としては何とも言えないんです。ですが、あのサイトは登録制でしょう?だから誰が使っているのかは分かるんですよね」

「なるほど……。となると、犯人は例の狙われたサイトの運営者かもしれない、ってことですか」

頭の回転が早いね、と糸部が同意してくれた。
尚も彼は喋り続ける。

「あのサイトの利用者が狙われてるのは間違いないんだけど、君の弟さんを含め、被害者たちには何の共通点もないんだ。だから、ただ単に」

「糸部っ」

熊森が糸部の頭を小突く。
それでようやく自分が一般人相手に喋りすぎたことに気付いたらしい。

バツの悪そうな顔で、軽い会釈をして出て行った。






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