フシダラナヒト【TABOO】

なぜ走るのかという問いは、なぜ恋をするのかという問いに似ている。


と私は思う。


なぜこんなにも辛くて苦しいことをするのか。正直自分でもよく分からない。



ただ、走っていると頭がクリアになる。邪念が振り払われる。



だから私は今そのために走っている。このどうしようもない邪念を振り払うために。




あの人が目の前に現れたりするから。


彼氏がいるのに一瞬で心を奪われてしまった。



文学研究サークルなのにマラソン選手を選ぶミーティングが開かれた時は驚いたけれど、文系サークル対抗のマラソン大会はこの大学の恒例行事らしい。


半ば強引に出場が決まったのは高校で長距離選手だった話をしていたせい。渋々受付票を実行委員会に提出しに行った時、あの人に出会った。