フシダラナヒト【TABOO】
そして角を曲がったその時。



あの人がいた。


一瞬目を奪われ、足がもつれた。


「わっ」

「大丈夫ですか」


転倒した私に駆け寄ってきた彼。


「大丈夫、です。……あれ?」


立ち上がることができない。


「くじいたのかも、つかまって」

「でも走らないと」


あと少しなのに。


「その足じゃ無理ですよ。連れていきますから」


走れない。一番になれない。それどころか邪念の元凶に肩を借りている。



脇道に連れて行かれたとき、別の女子が走っていくのが見えた。



「綺麗な走りだったのに、よそ見なんてするから」


そう言って笑う彼はどうしようもなく美しい。




私は賭けに負けた。

正しいと思っていた道にはもう戻れない。
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