まほろば【現代編】

iii

真人君が落ち着ける場所といって思い浮かぶのは一箇所しかない。

でも、そこまでの道順をちゃんと覚えているかと言われればいまいち自信はないが、とにかく向かうしかなかった。

真人君に一度連れられていったあの小屋。

確か戻ってくるときは、うちの近所の神社のすぐ近くに出てきたはずだ。

それを逆に辿れば行き着くことが出来るだろう。

そう、安直に考えていたが実際にはそう思う通りにはいかなかった。

まず第一に、以前と違うのは時間帯。

こんな暗闇の中では、方向音痴の私じゃなくたって自分がどこに向かっているのかなんてわからないはず。

それでも、勘だけを頼りに足を動かす。

いい加減、諦めの境地に達しそうになったところでやっと見覚えのある場所に出た。

確か、前にここから竹林の中に入っていったはず。

確実に蚊に刺されるのを覚悟して、その中へと足を進めた。
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