まほろば【現代編】
それが今は行っていないということは、儀式が始まってしまったことを意味するのではないか?

確か、紗綾が言っていた。

妻にするための儀式があると。

こめかみを冷たい汗が一筋流れ落ちる。

そのとき、目の前をまた鈍い光が通り過ぎた。

剣の先から放たれるその光の先に目を向け、こんなところで立ち止まっている場合ではないと自分を叱咤し、駆け出した。

細い通路を抜け、辿り着いたのは小さな広場。

通ってきた通路以外はすべて岩壁に囲まれており、その中央に大仰な扉が取り付けられていた。

扉の前に立った瞬間、押しつぶされてしまうような威圧感を中から感じた。

そして、その重圧の間を縫うように柔らかで清らかな、ずっと探し求めていた少女の気配が流れてきた。

それが確認できれば、後はもう躊躇することはない。

両手を扉につきグッと押し開く。

扉はあっけないほど簡単に開かれた。

まるで待ち受けていたかのように、スーッと開いていく。

そして、目の前には――
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