For 10 years
「今日のお礼。少ないけど、今晩のおかずにして」


「わっマジ?嬉しいよ。サンキュー」



そうお礼を言って、アパートをあとにした。


もう四人で食事……は叶わない。


だから、こういうふうに“俺の分”と多めに作って分けてくれた、その心遣いがすっげぇ嬉しかった。


しかし、あの二人はちゃんと内緒にできるんだろうか。


一抹の不安はあったけれど、今はそんなことより、早く絢華ちゃんを笑顔にしてやりてぇ……という気持ちの方が強かった。








それからの俺は……


いつもホールを気にしてばかりだった。


ちょうど一週間が経った頃、その時が訪れた。


その人物が外へ出たとたん……


俺も裏口から外へ走った。



「ちょっと待ってくれ!」



彼が振り向いた。


俺が声をかけたことに驚いたのか、一瞬目を見開いた。



「えっと、隼人さんですよね?」
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