ありがとうと伝えたい

初恋相手?



バスケマネージャーの
仕事になれはじめた頃

私はだいきに呼ばれた。

私は不思議に思いながら
とりあえず頷いた。

近くでゆかちゃんが
暗い表情でみつめていたことを知らずに。



外は真っ暗で
星がでていた。

だいきは
校門にいた。

私をみつけると
にこって
笑い駆け出してきた。

「かなみ!お疲れ!」

「お疲れ」


私はさりげなく
横にたった。

こんな人気者に
私が側にいて
いいのだろうか…


「ねぇ?かなみ」

「ん?」

私は考え事をしていたから声が裏返ってしまった。


そんな私にふって笑う
だいき。

「声裏返ってやがんの」

「びっくりしたんだもん」


ずっと笑ってるだいきを
見てたら
やっぱり変わらない。


ゆかちゃんから
聞いていたことが
想像できないくらい
無邪気だった。


きっと無邪気な笑顔は
あまりみせないのであろう。

だから
ゆかちゃんは
私に羨ましいと
言ったのだ。


「で、話って?」

私がいうと
あ、そうだったと
手をポンと叩いた。
そしてカバンの中から
なにかをだした。

「はい、これ」

「……なにこれ?」

グローバのキーホルダー
だった。

小さいとき
二人がどこかでまた
会えるようにって
私がだいきにあげた物…

「懐かしいー!これまだあったんだ!」

私がそういうと
だいきは真顔で言った。

「あたりまえじゃん、俺にとって…宝物だし」


私は驚いて
顔をあげた。
だいきは普通にさらっと
言ったから
どういう気持ちで
言っていたのかわからなかった。

「なんで、これをだしたの?」

私がいうと
だいきは遠くをみるように
言った。


「俺、かなみが初恋相手だったんだよ?」



え……?
初恋相手…?

私がポカーンと
だいきをみあげると
だいきは笑った。

「かなみ、マヌケな顔してっぞ!」

「ま、マヌケじゃないしっ!」

私が怒っていうと
だいきは
まだ笑いながらいった。


「かなみ、おまえは笑ってる顔がいいぞっ!」


私は
ふふっと笑った。

だいきも笑った。

不思議だなぁ
だいきは私が
笑うつぼを知ってるのかな?

でも初恋相手って…

だいきは
私をもう一度みつめた。

そしてボソッと
つぶやいた。



「俺のこと好きにさせてやる…」



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