ありがとうと伝えたい



「かなみちゃーん!俺にも飲み物!」

「あ、僕にも!」

……あの
なんでこんなふうに
なってるのかな?


バスケ部員たちに
囲まれていた。

なんでかはわからない。

ただ仕事をしに
来たら
こんな状況になっていた。


みんなニコニコして
私を見つめていた。

なんで??


「あの…なにかしました?」

私がおそるおそる聞くと
部長は笑った。



「だいきが認めた女の子=いい子ってことだからさ、みんな気にいっちゃって」



だいきくんって
何者…
私は
そう聞こうとしたそのときだった。


「おはようございます♪」

ゆかちゃんが
ニコニコしながらやってきた。

後ろには
だいきくんがいた。


だいきくんは
どこかめんどくさそうな
顔をしていた。


みんなに挨拶しながら
ゆかちゃんは後ろにいた、だいきくんに声をかけた。
けれどだいきくんは
上の空。

そんなだいきくんをみて
ため息をつくゆかちゃん。

「ゆかちゃん!」


私が声をかけると
ゆかちゃんは
すぐさまにこっと笑った。

「なんですか?」

「……何かあった?」

私が聞くと
途端に顔を暗くした。


ゆかちゃんは首をふり
逃げるように
去っていった。


私は恐る恐る
だいきくんをみると

さっきとは全然違う
スマイルで

「おはよう!かなみ」
といわれた。


そういえば
昨日、初恋相手って
言われたな…


確かに私も
だいきくんは
初恋相手だった。

けれど……今は

「…ねぇだいきくん」


だいきくんは
私を無邪気な笑顔で
見つめた。

私は深呼吸していった。
「私、今のだいきくん、好きじゃない」

「え?」


突然のことに驚くだいき。

私はゆっくりとだいきくんをみつめかえす。


「小さいときのだいきくんは人を傷つけたりしなかった…。優しくて誰に対しても平等だった。なのに…一番大切な人を傷つけてるだいきくんなんて好きじゃない! 」


だいきくんは
私をみつめた。

私はだいきくんに
なにをいってるのか
わからなくなった。
けれど
私がずっと思ってたこと。


だいきくんは
だいきくんじゃなくなった。

だいきくんは
しばらくすると
俯き、ボソッと言った。


「……確かにな、傷つけてたな…」

だいきくんは
静かに言った。

「バカだな…おまえは小さいときからそれが嫌だったよな…」



私はだいきくんに近づき
静かに言った。

「泣かせちゃだめだよ、だいきくん!ゆかちゃん泣かせちゃだめだよ…泣かせるなんてだいきくんじゃない」


だいきくんは
静かに笑った。
そして
私を見つめて言った。


「ありがとうな!俺、ゆかと別れるって決めたんだ。」



え…?

「別れる?なんで?」


だいきくんは
遠くをみつめて言った。


「……話し合って決める。俺、知らないうちに傷つけてだろ?ゆかのこと…ゆかは気づいたんだ、俺がかなみのこと好きだって」



私は驚いてみつめた。
だいきくんは
苦笑いした。

「俺、ゆかと話してくるから…ごめんな」

「あ、まって…」



だいきくんは
振り向きながらいった。

「俺、知らないうちにおまえを好きになってたんだ、これはほんとだよ!」


私は
ボー然とした。

突然の告白に
なにも答えられなかった。
< 7 / 11 >

この作品をシェア

pagetop