FULL MOON
「末松さん?」

声を掛けられ振り返ると後輩である篠原君が立っていた。

「もう帰ったかと思ってました。」

時計を見ると席を立ってからもう随分時間が過ぎたことが分かった。

「今、戻る。」

そう言って彼の横を通り過ぎようとした私の腕を彼が掴む。

「今から戻っても他の人達についていけませんよ。」

その言葉の中には戻るなという気持ちが込められているように感じた。

「でも…。」

「今から2人で飲みなおしましょうよ?」

私の言葉を遮るように言った彼はまるで逃がさないとばかりに掴んでいた手を離さない。
そして私が答えるよりも先に歩き出してしまった。
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