一番近くて、一番遠い二人





制服に着替えて部屋から
出ると申し訳なさそうな顔で
智也が立っていた。


「芽依…、そのあれだ・・
勝手に部屋入って悪かったな」

「別にもう良いよ…」

いや、本当は良くないけど
コイツの事になると少し甘く
なってしまう。

それに結構反省してるみたいだし

「でも、俺見てないからな!
ピンクのチェックのブラジャー何て!!」

「思いっきり見てるじゃんかっ!」

バシッと智也の頭を
叩き早歩きで階段を降り玄関を出た。


そして、今に至る。


「第一幼馴染み何だから良いじゃん」

「全然良くないから」

幼馴染みという単語に
チクリと胸が痛んだ。

「何でだよー、昔一緒にお風呂入った仲じゃん」

無言でコイツの脇腹に
パンチをいれる。

「ってえー!!芽依、今本気でやっただろ?」


ギャーギャー喚く智也を
無視して足早に学校へ向かった。

校門をくぐりクラス表を
見て私と智也の名前を探す。

あ、今年クラス違うんだ…。

「なーに、白けた顔してんのよ」

「沙羅!いやー・・、今年クラス
離れちゃってさ」

「まあまあ、私とは今年も
一緒のクラスだよ」

「やったー!沙羅が一緒なら良いや!」

沙羅は中学1年からの付き合いで
私が智也の事が好きって事を
唯一知ってる人。


嬉しいな♪何て思っていると
頭にズシッと重みがかかる。

顔を見なくても分かる。
鼻を擽る柑橘系の爽やかな匂い。

間違えるはずない
私の大好きな人の匂い。


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