東京
たった一本の煙草に勇気付けられた俺は、再び歩きだし雑木林をぬけた。

ぬけるとそこには
奇跡のようにあゆみが立ってた。

『真吾。何してるの?』


本当に奇跡だ。ばっちのくれた。奇跡。

「タバコが…」

『タバコ?』

「…飛び出して。」

『…え?』

現れるのが急すぎて、頭が真っ白になっていた。

ただ呆然と見つめ合う。

「お前なにしてんの?」

『私はだって、住んでるから。』

あぁ…もう!
いいよ。なんだっていいんだ。俺はお前に会えて嬉しいよ!

ずんずんずんずん!と、効果音が聞こえそうなくらいずんずんと
あゆみのもとへ進む。

『…真吾?』

「ばっち応援してくれてんだ!」

ぎゅううううっ!
とつぶれそうなくらい。あゆみの体を抱き締めると、こいつはまた少し痩せていた。

「俺のすべきことと
ばっちの気持ち!」

『…。』

「こうしなくちゃって思ったの!」


『…私のせいでしょ?』


同じように
あゆみも苦しんでいた。


「ばっちのこと一番理解してるのお前だろ?わかんだろ?」

あゆみは黙ったまま
俺の胸に顔を埋める。


「弱ってたらさ!怒られるでしょ!ばっちに!」


一番言わなければいけないこと。ばっちが言いたいはずのこと。
「精一杯生きようぜ!」

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