君に Ⅰ

もちろん加藤はいた。


だが、こんなときに、加藤ー。
なんて言ったら、加藤はきっと他の女たちに袋叩きにされるだろう。

だから、席を確認すると加藤に向かってばれないように紙を投げた。



一瞬加藤が驚いた顔でこっちを見たが、状況を察したのか、俺を見て微笑んだ。


だから、俺は、その場をあとにした。




このときの行動を誰かが見ているなんて、今の俺は思いもしなかっただろう・・・。
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