たっぷりのカフェラテをあなたと
「サンキュ」
「ん、じゃあ私もささっとシャワー浴びちゃうね」

 シャワールームに足を入れると、タイルのひんやりした冷たさが体に響く。 それでも蛇口をひねると、少しずつ暖かいお湯が出てきて、私の疲れた体に降り注いだ。
 腕を見ても、しっかり水をはじいているのを確認する。

(うん、私はまだ20代の体をしてる)

 30歳になった自分に不安を覚えていて、体の変化にいちいち神経を尖らせる。こんな自分に少し疲れているところもあるのだけど、浩介に抱いてもらっているうちは、私は女として最高に価値があるのだと思える。

『俺はデブは大嫌いなんだよ、やっぱり体はメリハリなくちゃ……やる気なくなる』

 浩介は出会った頃にこんな事を言っていた。
 私もその頃は自分の体が完璧に管理できていて、こういうのをコントロールできる精神がなければ女として失格だ……なんて思っていた。
 多分、今ぐらいの変化なら浩介が幻滅するっていうほどじゃないのは分かっている。
 少しふっくらしたかな、ぐらいなのだから。

(この体を許せないのは浩介じゃなくて、私自身なのかもしれない……)

 一通り体を洗ってシャワーを止める。
 ポタポタと髪から零れ落ちる水滴を眺めつつ、自分の価値をいったいどこに見つけていいのか戸惑った。
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