たっぷりのカフェラテをあなたと
 健吾さんだって私と同じように傷ついた人だ。
 いや、私よりもっと深い傷を負って、今もそれが癒えていない人なのかもしれない。

 でも、何故かこの人は常に自分を傷つけた相手を「許そう」と努力している。

 理屈は分かるけど、感情がそのようにはついていかない。
 それを彼も理解しているようで、私の肩に優しく手を乗せて「少し無理な事を言い過ぎたね」と謝るような事を言った。

「健吾さんが謝る事じゃないです……私が子供なのかもしれない」

 もう二度と鳴らないだろう浩介からのメールの着信音をまだ消せてない。
 嫌いだと。あんな男知らない……って思ってるのに。
 長い時間束縛されていた心に絡みついた糸が離れてくれない。

「誰だって大人になりきれずに悩んでるんだと思うよ。僕は絵里ちゃんに言葉をかけながらそれを自分にも同じように言い聞かせてるんだ」

 絶やさない微笑みに少し影を落として、健吾さんはジントニックの入ったグラスを傾ける。

「僕だって完璧じゃない……いや、不完全過ぎる自分に毎日気付かされる気がする」

「完璧ってなんでしょうね」

 ここまで言ったところで、私たちの間には何とも言えない沈黙が訪れた。

 互いの空虚感を埋めるようなこの関係。
 こんな間柄に、私の求める愛は生まれるんだろうか。

 
< 46 / 57 >

この作品をシェア

pagetop