たっぷりのカフェラテをあなたと
「変だな……その話を聞く前より、今の方が私は健吾さんを好きだと思ってる」

「……変な子だね」

 自嘲するような笑いを浮かべて、健吾さんは私の方に手を伸ばしてくる。
 その手を握り締め、彼との間に今……何か暖かいものが生まれるのを感じた。

「人は少し欠けてるから人なんだと思う」

 私の言葉に健吾さんは少し目を開く。

「欠けた部分を補いあって……いびつでもいいから完成した円を描こうとしてるんじゃないかな」

 この言葉を言いながら、私の瞳には涙が溢れていた。

 誰もが欠けている。

 それは自分が口にして初めて気付いた事で……何でも完璧を好んだ浩介からの解放がここでもう一つあったように思う。

「どこかが欠けた僕と絵里ちゃんは、お互いに無いものを埋めあえるのかな」
「そうかもしれない」

 互いに見つめあって、クスリと笑い合うと……そのまま自然に体を寄せ合い、気付いたら互いの唇を愛おしく接触させていた――――。

 健吾さんの腕の中は暖かくて、自分が卵にでもなった気分になる。
 こんなに安心したのはいつぶりか……体を重ねる事で愛おしさが増すのは女だけなんだろうか。
 健吾さんは、軽い寝息をたてながら眠っている。

「ふーん、結構まつ毛長いんだ」

 眼鏡を外した健吾さんの顔は女の子みたいに可愛い。
 自分を抱いた男性をこんなふうに子供扱いする事ってなかったんだけど、健吾さんは年上だっていうのに母性本能をくすぐるものを持っている。
 これだから年上の女性にモテてしまうのだ。

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