【短】悲観的恋愛物語
その日の帰り道、道路になんだか高級そうなお財布が落ちていた。


最初は素通りしようと思った。

でも今日不幸になったあたしは、他人の不幸すらも辛く思えて…結局近くの交番まで持って行った。

普段なら絶対しないだろうけど。


でも交番に行ってすぐ後悔。

お財布には結構入ってるらしくて、書類を書かなくてはいけなくなった。


別にお礼が欲しくて届けたわけじゃないし…正直めんどい。




「あの〜これからバイトの面接があって、急いでるんですけど」


無理な言い訳だとわかっていても、めんどうなことをするような心境じゃない。


「それでも連絡先ぐらいは教えてくれないと、こっちも困るからね〜」


連絡先ねー…あっ!!


「何かあったらここに連絡ください」


そう言ってあたしは、一枚の紙をポケットから取り出した。

それは今日あの人に渡そうとしてた、あたしのアドレスが書いてある紙。


「それじゃあ急ぐので」


警官の声も聞かずに、その場を後にした。

あの不幸な紙も処分できたし、なんだか少しだけスッキリ。


これから起こることなんか、あたしはまだ知らない…。
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