17-甘い君たち-


南緒は不思議そうに、それでも目にたくさんの涙をためながら俺を見上げた。その瞳に俺は、吸い込まれそうになる。

潤んだ瞳が俺を捉えていることに、不覚にも泣きそうになったりして。ああ、南緒、お前本当に、俺らを困らせるのがうまいよ。

見つめ合うこと、ほんの数十秒。


「……南緒」

「……尋?」

「南緒……」

「……どう、したの……?」

「南緒…」


名前を、呼ぶことしかできないんだ。

唇を重ねることも
抱きしめることも
好きだ、という言葉を吐くことでさえ。


いつだって俺らの脳裏にかすめる、あの絶対的約束。


_____ガチャッ


唐突にしたその音に、2人ともが一斉に扉の方を向いた。俺の手はスルリと南緒の頬からこぼれ落ちた。

不機嫌そうな翔太がそこに立っていて。
どこからかはわからないけど、俺たちの会話を聞いていたんだろうな、と察する。


「……尋、ちょっと来い」


俺を呼んだその声は、聞いたことのないほど低かった。

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