あの頃の想い【TABOO】
 かつて私の席だった場所に座ってみた。振り返ると彼は、数席ほど離れた斜め後ろぐらいの席に座っていた。


 笑顔の彼が口を開く。


「この席からおまえのこと見てた。毎日。気づいてた?」


 私は驚きながら、首をヨコに振る。


 席を立った彼は、私の傍で止まった。髪に触れてくる手。


「髪も、背中も、制服に包まれた身体のラインも、全部見てた、あの頃」


 私の目を見つめながらそう告げた彼が、突然、身体を屈めた。


 ふいうちのキス。


 反射的に彼の肩を押した。


「だめ。付き合ってる人がいるの」


「……じゃあ、今だけ忘れろよ。今だけでいいから」


 再び重なってくる唇。

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