河の流れは絶えず~和泉編~
「ごめんなさい、こんな辛気臭い話するつもりじゃなかったんだけど、何となく話してしまった。今の話、忘れてください。」

と、麦湯を口に含む。

ちょっとバツの悪そうな顔をしている。

しかし、何だろうか。

どうして彼女はこんな内輪のようなことを俺に話して聞かせたのか。

俺を信頼してくれているのだろうか。

だが、それ以上に、自分と似たような経験をしているというのが、俺にとっても林太郎と同様に心を許せる人になりつつあった。

だから、

「俺も似たようなもんかもしれないな。」

と口をついて出た言葉に自分でも驚いたが、言ってしまえば何かすっきりするものがあって、麦湯を飲み干し、お代わりを告げてから話し始めた。
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