河の流れは絶えず~和泉編~

ふたつ

「俺も二親の顔を知らないで、育ってるんだ。」

「、、、、、、え?」

そう言う、彼女の顔は予想もしていなかったことを聞かされて、驚いているように見えた。

「物心ついた時には、すでに二親は亡くなっていた後で、俺を育ててくれたのは一番上の兄夫婦だった。うちは全部で7人兄弟で俺はその末っ子なので、兄弟が面倒を見てくれたんです。女兄弟は皆、嫁に行ってしまっていたけれど、家に帰れば、なんやかやと世話を焼いてくれた。」

ふと、足元の石ころを見る。

「親はいなかったが、寂しい思いは少しもせずにすんだ。、、、、まあ、たまに、よその子が親と歩いているのを見て、泣いて帰ってきたこともあったけど、それ以上に兄弟が愛情を掛けてくれたからね。、、、、そういうところは君と似ているかも知れないな。」

麦湯のお代わりが来たので話を止め、彼女の湯飲みに注いだ。

「その後、一高に受かって回りはすごく喜んでくれたが、家から通うのは無理なので、縁者の紹介で今の下宿を紹介してもらったんだ。家から出はしたけど、まだまだ面倒は見てもらっている身だからね。半端といえば半端だわな。」

見れば彼女もびっくりしているようだった。

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