河の流れは絶えず~和泉編~
「そんなこと、林太郎は話しさえしなかったよ。でも、そういうことは絶対に言わんな、あいつは。」

「そうですか?」

「うん、大事なことほど話さない、あいつは」

何となくあいつのことを考えた。

沢 林太郎という男は、常に冷静沈着、そのくせ情の篤い奴でそれがためによく奴とは昔けんかをした。

そんな奴なのであいつを慕う奴は多く、奴を取り囲んで一派らしきものがあるが、そもそもそんなものにはてんで興味などない林太郎には煩いハエのようなものでしかなかった。

一高時代からの同級だったし、大学で専攻が別れてからも共に剣道と古武術を学び続けているということから、互いに一目置くようになった。

しかし、そうはなっても奴の対妹の警戒網は俺もしっかり範疇に入っていたらしく、家に遊びに行っても、ついぞ一度も家で彼女に会ったことはなかった。

、、、、、本当に、馬鹿がつくほどのシスコンだ。
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